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主人を救った猫。ニャンとも不思議な美喜井稲荷(みきいいなり)の秘密

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Trivia!

東京の赤坂に猫を祀る稲荷があった

神様になった猫は不思議な力を持っていた

猫の額ほどの境内。社殿の蟇股(かえるまた)には二体の不思議な猫様の姿。左の猫様は小鳥と遊びウィンク。右の猫様は邪鬼を踏み、悪い魂を食べている?

この猫様たちはなんだ!と不思議が増幅して止まりません。今回は、猫好きさんに一度は訪れてほしい美喜井稲荷の秘密をご紹介します。

仁王像や四天王像が邪鬼を踏む構図はよく見かけますが、猫が踏むのはめずらしい。

美喜井稲荷は神社でも寺でもない?

正式名称を「美安温閣 美喜井稲荷」といいます。

最初に境内にある由緒書きを見てみましょう。

美喜井稲荷の御守護神は京都の比叡山から御降りになりました霊の高い神様です。

この神様にお願いする方は蛸を召上らぬこと

この神様を信仰される方は何事も心配ありません

うーむ。よく分かりませんね…。とりあえず、神様らしい!

ところがです。都の宗教法人名簿は「仏教系」として登録され、社殿の前には香炉があります。線香は仏様への供え物で、その香りや煙は体を浄めるもの。これは神社にはない作法なのです。

ますます謎が深まります……。

もう一度、正式な社名を見てみましょう。美安温……。「みゃおん」と読めることにお気づきでしょうか?

すると「美喜井」は「みきぃ」と読みたくなりますよね。そう、美喜井稲荷は実在した猫「美喜井」をお祀りしているのです。ですから、神仏どちらかを問うよりも、この猫稲荷を祀った方の心や気持ちを知ったほうが、この境内の不思議を理解できるでしょう。

稲荷なのに猫が祀られるワケ

この社殿の建立者が語る50年前の記事があります。とても興味深いお話です。

それは戦前のこと。当地に暮らした方のお宅に「美喜井」という名の猫がいて、不思議な力を持っていたそうです。

ある夜、飼い主の女性が寝ていると美喜井がさかんに鳴いて起こします。ハッと目が覚めると、部屋中に煙が漂い、美喜井は火事を教えてくれたとのこと。さらに、美喜井に命を助けられたことが何度かあったそうです。

こんな話も。美喜井が死んだのち、このお宅の女中さんが毎晩二時ごろ、猫の夢にうなされるようになりました。

もしやこれは美喜井の霊かと深くお参りすると、その晩から夢がピタリと止んだと。

またある時のこと、とある高僧の方がこう話しました。美喜井は比叡山から猫の形を借りてやってきた霊位の高い神様だと。

それ以来、この家の方は美喜井を本格的にお祀りするようになり、この不思議な猫稲荷が誕生したというわけです。

羊羹で有名な「とらや赤坂店」の真裏に美喜井稲荷がある。

寺でも「稲荷」と呼ばれる豊川稲荷東京別院

ところで「稲荷」とはお狐様を神の使いとする神社につく名称じゃないの? 

美喜井稲荷は宗教法人名簿上では寺で稲荷です。そして、美喜井稲荷のすぐそばには豊川稲荷東京別院があります。江戸時代からよく知られた曹洞宗の寺で、豐川吒枳尼眞天(とよかわだきにしんてん)を祀ります。

豐川吒枳尼眞天が稲穂をかつぎ、白い狐に跨っていることから「豊川稲荷」という通称が広まり、全国的に定着した名称となりました。そう、寺でも「稲荷」と呼ばれることに不思議はないのです。

美喜井稲荷の境内を訪れると、お寺ではあっても限りなく「神社」を感じます。これは愛猫を祀った方の想いそのままの空間と受け取るべきでしょう。

ですから、由緒書きも、この稲荷を大切にしてね、猫にとって毒となる蛸を食べてこないでねという猫愛によって書かれたものだと筆者は感じました。

信じる人を幸せにする猫の神様だった

美喜井の飼い主は、愛猫のおかげで多くの幸せを得ただけでなく、のちに美喜井稲荷を信仰した人たちにも多くの幸せが訪れたそうです。

「この神様を信仰される方は何事も心配ありません」

この一文は、そんな実体験に基づく言葉だったのです。

非常に狭い境内ですが、時折、参拝者が訪れる。

さて、最後に「美喜井」に会ってみましょう。階段を上り、境内に入るとすぐ目の間に鎮座しているのが美喜井です。背後の社額には「美喜井稲荷諸大眷神」と書かれています。この像は実は二代目。初代の像を境内に見ることはできませんが、現在の像と同じ位置から首を捻るように社殿に視線を送っていました。

石像が傷んできたので新しくされたのでしょう。今でも美喜井を大切にされる方々がいらっしゃるのですね。

参考図書「キャットライフ1巻2号」


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