東京散歩トリビア団による散歩
本郷という文士と坂の町をどのように歩こうか。
外せないポイントはある。それは、この土地に暮らした悲運の女流作家・樋口一葉の足跡。
彼女が人生のどん底を暮らした菊坂下の旧居跡には一葉が使用した井戸が今も残り、井戸の奥には戦前の木造三階建の家屋が見える。
そこに漂う濃い昭和情緒はぜひとも静かに眺めたい。
じつは樋口一葉がまだ小さいころ、彼女の暮らす家は東大の赤門に近い場所にあった。
そのころの一葉一家は裕福で、彼女にとってはまばゆいほど幸せな時代。
幸と不幸というまるで対照的な「人生の時」が同じ本郷にあったわけだ。
その対照を地形で見れば、幸せな時代とは本郷台地の高台で暮らした時であり、不幸な時代とは台地下の低地で井戸の水を汲んだ時でもある。
と、本郷と一葉について書きだしたら話が止まらなくなる。
詳しくはこちらをどうぞ。
ところで、このコースを晩秋、いや初冬に選んだのは東大構内のイチョウ並木を見るためだった。
昭和初期に建築されたゴシック様式の校舎群と黄色に色づいたイチョウの美しさは類のない景観だと個人的には思っている。
設計者の名を冠して内田ゴシックと呼ばれる校舎建築。どこを切り取っても絵になる。
そして、お昼。東京散歩トリビア団ではランチを楽しみのひとつにしていて、予約しておいたのは欧風カレーのル・ムーラン。
丁寧に柔らかく煮込んだ肉とまろやかでコクの深いカレー。
新しくできた店なのだけれど、神保町のカレーの名店、ガヴィアルと関係が深く、今後、本郷の人気カレーとなることは間違いないと思う。
ランチの後は、湯島、上野へ。
江戸時代、湯島天神が名所とされたのは、江戸の一大名所・不忍池を見下ろす位置にあったからだろう。湯島天神の境内には料理屋が並んだ。
不忍池については、明治期にこの池の外周が競馬場になったり自動車レース場になったことは意外な歴史ではないだろうか。
まぁ、このあたりは話し出すときりがないほどの名所ゾーンで、おそらく参加者も意外な歴史の数々を楽しんでくださったことと思う。
最後は上野のお山に前方後円墳があるという話で締めた。歩数計は1万5千歩。来年の秋にまたこのルートを散歩したい。
ご参加くださった方々、ありがとうございました。
写真・文/結一
募集内容
※このイベントは終了しました。10名のご参加をありがとうございました。お礼申し上げます。
開催日時/2022年12月4日10時~15時(定員のため締め切りました)
集合場所/東京メトロ丸の内線本郷三丁目駅(集合場所の詳細は参加する方へのみお知らせします)
解散場所/JR上野駅(予定)
コース/金魚坂~一葉桜木の宿~一葉の井戸~鳳明館~万定フルーツパーラー(建物を見るだけ)~東大構内~麟祥院~湯島天神~不忍池の役小角~穴稲荷~上野の山の西洋建築と摺鉢山古墳など。
参加費/2200円(散歩ガイド料+資料代)※昼食は参加費に含まれません。
定員10名
参加お申込みはTwitterアカウント「東京散歩トリビア団」にて受け付けます。DMでお申し込みください。
東京には坂が多い。そう感じたことはありませんか?
もちろん、そこには地形上の理由があります。
本郷もまた坂の街。
かつて、樋口一葉や坪内逍遥、宮沢賢治など数多くの文士たちが暮らした土地であることはご存知の方も多いかと。
二人の文士がこんな言葉を残しています。
「坂は即ち平地に生じた波瀾である」永井荷風
「坂のある風景は、ふしぎに浪漫的で、のすたるぢやをあたえるものだ」萩原朔太郎
坂から生じる波瀾と浪漫。
そう、本郷に暮らし、平坦ならざる生涯を送ったのは悲運の女流作家、樋口一葉でした。
彼女が暮らした地に今も残る、昭和の路地裏や木造の家々。
東大構内に入ったならば、昭和初期の浪漫あふれる西洋建築をじっくりと観察したい。
そして、湯島天神や不忍池、上野のお山へ。
知ってるようで知らない、そもそも気づきもしなかったような歴史トリビアがみなさんを待っているかもしれません。
深まる秋の一日を好奇心いっぱいの散歩で過ごしませんか。