シリーズ1/みかん畑と海。根府川編
東京散歩トリビア団による散歩
「エモ散歩」と言ってみたものの、この道を歩く他の方がどう感じるか、そこに不安はあるわけで。
根府川駅で下車するや、ホームから見える青い海を夢中で写真に収める参加者の方々。
眼下にこれほど美しい海を望むプラットホームが東京周辺にいくつあるのだろう。
駅舎だって相当にエモい。空と海の色に合わせた水色の木造建築で、外から見ると、駅舎の中に群青の海が見える。
この駅舎、関東大震災(1923年)の翌年の1924年に建築されたレトロ駅舎でもある。
というのも、関東大震災で発生した山津波によって根府川駅はプラットフォームごと海へと押し流された歴史がある。そして、その復興で建てられた駅舎がこうして現存しているのだ。
眼下の海には、その時に押し流された構造物の残骸が今も沈んでいるという。
駅を出る。急斜面を下る細い道を行く。そこは小さな集落の中。
視線の先に白糸川に架かる赤い鉄橋が見える。
根府川駅の背後に広がる山。その斜面を伝い海へと注ぐ清い水の流れ、それが白糸川だ。
赤い鉄橋と白糸川の美しい景色を写真に収め、再び山のほうへ白糸川沿いの道を上る。
背後を振り返る。
エモ散歩と呼びたくなる気持ちが一寸でも伝わると嬉しい。
旧道まで坂を上ると、しばらくはアップダウンの少ない道をのんびりと歩く。
道中、からみ餅で有名な「鈴樹」や築70年の古民家を利用した人気のパン屋「麦踏」など立ち寄りポイントにも事欠かない。
やがて水平線へと続く海に面した山の斜面にみかん畑が広がり始める。
あのみかん畑の中を歩きたい。初めてここを歩いた時、僕は行きつ戻りつしながら「みかん畑の中の海へと続く道」をひたすら探した。
そんな道があったのだ。
いよいよ根府川の海、江ノ浦漁港へと向かってみかん畑の道を下る。この道がまた最高にエモい。
みかん畑を下ると、小さな踏切がある。
参加者の女性が映画『スタンド・バイ・ミー』を思い出すと話した。
わかる。冒険心をくすぐる踏切だもの。映画のワンシーンにあった仲間と線路の上を歩く“冒険の始まり”を味わえる。
『スタンド・バイ・ミー』といえば、少年時代のリバー・フェニックスとベン・E・キングの名曲『Stand By Me』。少年時代にこの映画を観たことは僕の人生においてラッキーな出来事のひとつかもしれない。
線路を渡ると、やがて江ノ浦漁港へと出る。
小さな漁港。
係留された船と防波堤、ダイビングスクール、数軒の料理屋のほかに何があるというわけでもない。
でも、そこには小さな漁村の初めて歩く細い道があって、それは旅情緒、旅の醍醐味と言ってもいい見知らぬ土地で出会う散歩道との一期一会でもあって。
とにかく海が青い。
見てよ、この海の色。
ふだん都内での散歩会に参加してくださる方々が、まさかこんな遠方まで足をお運びくださるとは思いもよりませんでした。みなさんと共有した青い空と海の色を忘れることはないでしょう。
ご参加の10名の方々、心よりお礼申し上げます。
写真・文/結一
※このイベントは終了いたいしました。10名のご参加をありがとうございました。
開催日時/2022年12月18日(日)10時~15時
集合場所/JR東海道線根府川駅10時(集合場所の詳細は参加する方へのみお知らせします)
解散場所/JR東海道線根府川駅14時
参加費/2200円(ガイド料+資料代)※昼食代は参加費に含まれません。
定員10名
コース/根府川駅~寺山神社~岩泉寺~赤い鉄橋~釈迦堂~根府川関所跡~白糸橋~元祖からみもち鈴樹(つきたてのもち)~天正庵跡~麦焼処麦踏(素敵な古民家パン屋)~みかん畑~ハエタタキ(鉄道遺構)~江の浦漁港~八木下農園(緑マーマレードが美味い)~鈴廣蒲鉾~根府川駅
参加お申込みはTwitterアカウント「東京散歩トリビア団」にて受け付けます。Twitterから「参加希望」とDMをお送りください。
JR小田原駅と熱海駅の間に挟まれた、わりと飛ばされがちな早川駅、根府川駅、真鶴駅、湯河原駅の4駅を計4回のシリーズで毎月散歩します。
第一回はみかん畑と海の癒しの風景が広がる根府川駅をスタート。アップダウンがありますが、歩きやすいコースです。見晴らし良く、緑に囲まれ、時期的に紅葉を楽しむことができるのではと期待しています。ご興味ある方はぜひご参加ください。
第二回以降のスケジュール
第二回/1月28日(土)真鶴駅
第三回/2月25日(土)早川駅
第四回/3月25日(土)湯河原駅